【合格者が話す】「効用」「相対的希少性」「有効需要」を深堀して考える

不動産の価格は!?

不動産鑑定評価基準の第1章第1節には、下記のような記載があります。

不動産鑑定評価基準の第1章第1節「不動産とその価格」

不動産の価格は、一般に、
(1)その不動産に対してわれわれが認める効用
(2)その不動産の相対的稀少性
(3)その不動産に対する有効需要
の三者の相関結合によって生ずる不動産の経済価値を、貨幣額をもって表示したもの
である。

「効用」「相対的希少性」「有効需要」を深堀してみる

不動産鑑定評価基準の第1章第1節にある「その不動産に対してわれわれが認める効用」「その不動産の相対的稀少性」「その不動産に対する有効需要」について深堀して考えてみましょう。

その不動産に対してわれわれが認める効用

効用とはどう考えたらいいでしょうか。辞書を引くと使いみち、用途などが出てきます。

不動産でいうと、①その不動産が役に立つこと、そして②所有の欲求を起こさせるものと言いかえられると思います。役立つこと、だからこそ私たちはその不動産を所有したいといったことを望んだりします。そのような欲求を起こさせる力を効用と考えてみます。この不動産は、役立つから所有したいという欲求があるので、「われわれが認める効用」という言葉になるわけです。

例えば、住宅は自分たちが住むために役立つこと、そしていい住宅地ほど快適性が高く所有の欲求を起こさせます。ただし、欲求とは時と場所によって異なるものです。つまり、時と場所によって価値が異なってきます。例えば、満腹者や満腹時にご飯の価値は低いですが、空腹者や空腹時には、価値の高いものになります。

その不動産の相対的希少性

続いては、相対的希少性についてです。効用(役に立って、欲しい)のみでは価値は生まれないものです。その量が豊富であって、いつどこでも、自由勝手に、対価や犠牲を支払うことなくて、所有又は使用が出来る場合には、価値は生まれません。

例えば、空気が代表例です。空気は原則的にいつどこでも、自由勝手にお金を払うことなく吸うことが出来るので、価値という考えがありません。つまり、数量に限りがあること、効用に対して、希少性があるときに価値が生まれます。不動産、特に土地は自然的特性により希少性が高いですね。

相対的というのは、同じ土地でも希少性については大小があります。例えば、通勤時間30分以内の住宅地を探した場合、必ずしもある1つの不動産でなければいけないということはなく、その条件を満たす土地は、必ずしもその希少性は絶対的なものではなく、かなりの量があるわけです。そのため、相対的といった言葉は入っています。

その不動産に対する有効需要

3つ目は、有効需要についてです。効用と相対的希少性だけでは、価格は生じません。効用、相対的希少性に有効需要が加わって、はじめて価格が生まれます。つまり、ある金額が提供され、その者を取得したい、使いたいという欲求、現実の購入という裏付けを伴って有効需要となります。

まとめ

不動産の価値を生み出す必須のものとして、われわれがその不動産に対して認める効用、その不動産の相対的希少性、その不動産に対する有効需要の3つがありますが、この3者は単独に作用するものではありません。有効需要の基礎には効用があり、相対的希少性は康応にかかわる意味をもっています。従って、不動産の価値はこれら三者の相関結合によって生じるものなのです。