江東区LRT構想~2022年の今~

江東LRT構想

江東区の南北交通の充実を図るため、越中島貨物線の一部及び明治通り沿いの東京都有地を活用し、亀戸~新木場間にLRTを整備する構想(越中島支線の旅客化)があります。江東区では現在長期構想の計画となっており、区としては8号線延伸の豊洲~住吉を先行して実現させたいのでしょう。本日は、2022年の現場を見ながら、江東区LRT構想について話をしていきます。

LRTとは

LRTとは、Light Rail Transit(ライトレールランジット)の略です。乗降の容易性、定時性、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する交通システムのことです。

近年、道路交通を補完し、人と環境にやさしい公共交通として再評価されています。

国土交通省「LRTの導入支援」より

越中島貨物は、1日3往復 「南砂線路公園」

越中島貨物は、江東区塩浜2丁目の越中島貨物駅と葛飾区にある新小岩駅の間を日曜日を除き、1日3往復運行しています。レールを輸送するディーゼル機関車は1日3回見ることができるということです。

南砂線路公園は、昭和4年(1929年)開業の貨物線跡地を利用して、平成22年(2010年)に開園しました。この公園は間近で貨物列車が見学できることから「南砂線路公園」と名付けられています。

【平成15年3月】江東区LRT基本構想より(江東区)

平成13年7月に、日本PFI協会はJR小名木川線を活用したLRT事業が区の一定の補助のもとで、PFI事業として成り立つとの事業化提案書を提出されました。

これを受け、江東区は、平成13~15年に調査検討を行いましたが、事業収支の安定を図るために公的支援が必要なことや、新木場、新砂地域におけるまちづくりの現状、交通結節点での接続可能性を勘案すると、課題が多いことから、平成15年12月に長期的構想と位置付けています。

亀戸~新木場間のLRTの4つのメリット
  • 路線バスよりも早い:亀戸駅駅通り~新木場駅前の路線バス所要時間は22分~28分。LRTの所要時間は15分以内を目標としています。
  • バスより高い輸送力:バス利用の場合最大1300人/時間。LRTの場合2~3000人/時間を目標としています。
  • まちのイメージアップ:バスより優れる交通機能、利便性を備え、地域活性化の一要素としてインパクトを与える工夫を行い、地域の発展・イメージアップを目標としています。
  • 既存施設の有効活用:新たな南北方向の都市軸を形成するにあたって、市街地内に現存する貨物線、明治通り沿いにある都有地を有効に活用して効率的な施設整備を行うことを目標としています。
主要交差部の検証
  • 南砂4丁目交差点(葛西橋通りとの交差)、日曹橋交差点(永代通りとの交差):踏切制御の場合は交通の処理台数が今に比べて1~3割減少するため道路交通への影響が大きいが、信号制御であれば影響は少ないことから、信号制御による平面交差での対応が考えられる。
  • 夢の島交差点:周辺開発を見込んだ将来通料で検討した結果、道路交通に与える影響が大きく、現状の道路構造では平面交差は困難である。しかし、夢の島交差点の平面横断は、新木場駅とLRTの結節に密接に関係していることから、道路交差部の立体化等の道路構造の変化、LRT立体化、周辺街路の開通による変化など幅を広げて検討を行う必要がある。

問題点は夢の島交差点でしょう。国道357号線の交通量がとてつもなく多いためです。区の調査では、道路交通の立体化、LRTの立体化、周辺街路の開通があげられています。しかし、夢の島交差点は、上空を首都高速湾岸線、京葉線などが走っています。駅を夢の島交差点の北側に設けてることも一つの考えかと思いますが、JR京葉線や有楽町線の乗り継ぎに手間がかかることになります。この点は目に見える課題なのではないでしょうか。

費用対効果
  • 概算建築費:前線単線116~146億円/複線154億円~204億円
  • LRTの整備効果:自動車交通量が3%~8%削減できる
  • 土地及び既存施設使用料の負担があり、単線で高位の需要水準であるケース以外は採算性確保が難しいと見込まれる。
  • 建築費・運営費の一部を支援が前提:複線の場合:約43億円~57億円の建設費支援と年間3.5億円の土地及び既存施設使用料を行政が支援することで中位水準の需要(約1.4万人/日以上)で採算が見込まれる。単線では約27~40億円の建設費支援と年間3.5億円の土地及び既存施設使用料を行政が支援することで中位水準の需要(約1.6万人/日以上)で採算が見込まれる。

採算を考えると、建築費・運営費の一部を行政が支援することでしか採算は合ってこないという結果

江東区LRT構想調査より

【平成15年12月】LRT事業構想の評価と今後の進め方(江東区)

亀戸~新木場間LRT事業に対する評価
  • 江東区内陸部と臨海部を結ぶ南北交通の充実は長年の課題であり、亀戸~新木場間を結ぶLRTは交通利便性の向上とまちの活性化を図るうえで重要である。沿線住民の8割近くが南北交通としてのLRTの実現を望んでおあり、区民の期待は大きい。
  • 明治通りの自動車交通量の抑制による環境改善、高齢社会にあってバリアフリー交通の実現が可能となる。
  • J貨物線や明治路通り添いの空間を活用して導入するため、物理的制約が少なく、事業の早期実現や投資効果の面で有望な事業である
LRT実現の主要課題
  • 平面交差:葛西橋通り、永代通りは平面交差が可能である。しかし、国道357号線について平面交差は周辺開発を見込んだ将来交通量で検討したとろ困難との結果であった。現時点で夢の島陸上競技場付近を終点としなければならず、新木場駅との接続は不便なものとならざるを得なくなった。国道の立体化にあわせての平面交差等、検討の幅を広げることによって新木場駅方向へ延伸させる可能性はあるものの、課題の解決に時間がかかる。
  • まつづくり:高い開発ポテンシャルを持つ新木場地区、新砂地区と亀戸副都心との連携が江東区の発展に必要であり、その手段としてLRTの整備が有効である。しかし、新木場地区は現時点で開発の方向性を定めるには課題が多く、新砂地区では物流機能の集積が多いため、長期的に検討していく必要がある。
  • 需要予測からの収支:江東区のLRTは既存都市施設(貨物船、臨海貨物船敷)をいかしたコストパフォーマンスに優れ、実現可能性のある交通機関であるが、それでも事業収支の安定を図るには手厚い公的支援が必要とわかった。

【平成27年7月】広域交通ネットワーク計画について(東京都)

東京都が平成27年7月に公表した「広域交通ネットワーク計画」では、「越中島貨物線貨客併用化」として検討されましたが、収支採算性の評価結果が「累積資金収支の黒字転換年が41年以上又は累積資金収支が黒字に転換しない」となり、未だ事業性が課題となっていることが明らかとなりました。

広域交通ネットワーク計画について「検討路線一覧」より

2022年LRT (仮)駅の現在

「江東区LRT基本構想調査H15.3」より

2003年(平成15年)に調査資料にあった仮の停車駅が、2022年現在時点でどのようになっているかを現地確認しながら話をしていきたいと思います。

(仮)亀戸駅~(仮)葛西橋

(仮)亀戸駅

(仮)亀戸駅です。亀戸駅付近は、駅が既にありますので、位置については想定できるかと思います。

(仮)新大橋通り

続いては、(仮)新大橋通り駅です。都営地下鉄新宿線「西大島」駅から新大橋通り沿いに少し歩くとたどり着きます。写真は、新大橋通りの北側歩道部分から撮っています。駅の位置は新大橋通りの北側部分でしょうか。
(仮)小名木川

続いて、(仮)小名木川駅です。小名木川貨物駅の跡地に、2010年(平成22年)アリオ北砂が出来き営業しています。その近くになります。

(仮)北砂

(仮)北砂駅です。地図でみると線路の少し西側に(仮)北砂駅が位置しています。現場につくとそこは、駐車場と建物がありました。JR貨物と京葉臨海鉄道の名前がありました。将来LRTが実現した時はこの土地を有効活用するということでしょうか。


(仮)葛西橋

(仮)葛西橋通りです。場所は、葛西橋通り沿いの北側で、線路の東側に位置しているようです。現場は、南砂線路公園になっている場所だと思われます。南砂線路公園は、平成22年(2010年)に開園しています。

(仮)永代通り~(仮)新木場駅

(仮)永代通り

(仮)永代通り駅です。地図をみると駅が上りと下りで分かれているのでしょうか。永代通りの南西側と北東側に2か所印が付いているのがわかります。個人的には、亀戸駅・新木場駅の次に利用者が多いのではないかと思う駅です。


(仮)郵便局前

(仮)郵便局前です。明治通り添いの新東京郵便局の前あたりです。このあたりは、明治通り沿い西側がすでに都有地として準備万端なエリアですね。


(仮)夢の島マリーナ(仮)夢の島公園

(仮)夢の島マリーナと(仮)夢の島公園です。他の駅の間隔からみるととてもこの2つの駅は近いですね。

(仮)新木場駅前

(仮)新木場駅です。地図では国道357号線を渡る前と、国道357号線を渡った後の2か所に印があります。写真の(仮)新木場駅①が国道357号線北側現地、(仮)新木場駅②が国道357号線南側現地付近です。江東区の調査結果をみると北側エリアにできる可能性が高いのでしょうか。

亀戸以北と新木場以南について

亀戸~新木場間のLRT構想の中で将来構想として、亀戸以北と新木場駅以南も構想もあります。簡単に見てみたいと思います。

亀戸以北
  • 亀戸駅以北については、東武亀戸線が亀戸駅から曳舟駅まで伸びていて、東武伊勢崎線と接続しており、LRT計画として活用している越中島貨物線は亀戸から更に新小岩操車場を経由して金町まで伸び、常磐線に接続しています。
  • 墨田、江戸川、葛飾各区の地域に路線が延伸することになれば、LRTがより広域的な公共交通機関として機能することになり、交通利便性はさらに向上すると考えられています。

江東区LRT構想調査より

新木場以南
  • 臨海部と既成市街地の連携強化を考えると、新木場以南に延伸することが望ましいと考えられます。延伸方向としては、南下直進、あるいは南東方向の2方向がありえ、東京へリポートや若洲地区まで延伸することも考えられますが、新木場地区全体のまちづくりの中で検討すべき課題となっています。

江東区LRT構想調査より

アトレ亀戸:そらいどひろばから見る貨物列車

亀戸駅前アトレ7階からそらいどひろばに出て電車を見ることができます。

タイミングがあえば、JR総武線快速、JR総武中央線、東武亀戸線だけでなく貨物列車も見ることが出来ます。私はたまたま上がったタイミングで少しだけ見ることが出来ました。見なれない景色なので楽しいです。