相続土地国庫帰属法
本日は、国が土地を買い取る制度と言われている相続土地国庫帰属法(令和5年、2023年4月27日スタート)について話をしていきます。
土地の国庫帰属法って何!?
国庫帰属の審査手数料はいくらですか?
国庫帰属のための審査手数料は、土地1筆あたり14,000円です。申請時に、申請書に審査手数料の額に相当する収入印紙を貼って納付します。
手数料の納付後は、申請を取り下げた場合や、審査の結果、却下・不承認となった場合でも、手数料を返還できないようです。
負担金っていくらですか?
農地・森林・その他については、計算方法が異なります。
国に帰属ができない土地の10項目
ここでは、国に帰属ができない10の項目を見ていこうと思います。①~⑤については該当がないとそもそも申請ができず、申請の段階で却下となってしまう物件です。⑥~⑩は審査の段階で該当すると不承認となってしまう土地です。それでは一つずつ見ていきましょう。
建物が存する土地
1つ目の項目は「建物が存する土地」です。シンプルでわかりやすい項目です。建物があると管理コストが高いため、国としては引き受けられないよということですね。
抵当権・賃借権などが設定されている土地
2つ目の項目は「抵当権・賃借権などが設定されている土地」です。分かりやすい例でいうと銀行からお金を借りていて抵当権が設定されている物件、土地を貸して賃料を得ている物件はNGということになります。
通路など他人による使用が予定される土地が含まれている土地
3つ目の項目は「通路など他人による使用が予定される土地が含まれている土地」です。法務省のHPでは6つの事例が出ています。
- 現在、通路として利用されている土地
- 墓地内の土地
- 境内地
- 現在、水道用地として利用されている土地
- 現在、用悪水路として利用されている土地
- 現在、ため池として利用されている土地
①の現在通路として利用されている土地というのは、たまにあるかと思います。また、⑤用悪水路は道路と自宅の間に流れていたりするのがこちらもたまにあるかと思います。②③④⑥については、ケースとしては少ないと思いますが、該当すると申請することが出来ない要件とされています。
土壌汚染されている土地
4つ目の項目は、「土壌汚染されている土地」です。土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地は土壌汚染を除去するために莫大な費用がかかります。そのため、該当する土地は申請することができません。
ここでは、土壌汚染対策法施行規則第31条第1項・第2項の基準を超える特定有害物質により汚染されている土地のようです。
境界が明らかにでない土地、争いがある土地
5つ目の項目は、「境界が明らかでない土地、争いがある土地」です。法務省のHPでは境界(所有権の範囲)が明らかな土地とは以下の2つを満たしている土地をいいます。
- 申請者が認識している隣接土地との境界が表示されていること。既設境界標、地物、地形又は工作物等の存在により境界点を表示することができる場合は、それらを申請者が提出する図面に表示します。それらが存在しない場合は、申請者が認識する境界を表示するため、申請者が境界点を表示する目印を設置し、申請者が提出する図面に表示し、申請者が認識している隣接土地との境界を表示する必要があります。
- 申請者が認識している申請土地の境界について、隣地所有者が認識している境界と相違がなく、争いがないこと。申請後、法務局から隣接する土地の所有者の方へ、境界争いの有無等について確認の連絡がされます。
つまり、測量や境界確認書の提出までは求められないようです。例えば、フェンスやブロック塀が設置されいて、申請者が提出する図面に図示して、隣地と境界について争いがなければ、問題ないという解釈ではないでしょうか。
崖(勾配30度、高さ5m以上)がある土地
6つ目の項目は、「崖(勾配30度、高さ5m以上)がある土地」です。通常の管理にあたり多大な費用と労力がかかるためですね。
管理を阻害する車や樹木など地上に存する土地
7つ目の項目は、「管理を阻害する車や樹木などが地上に存する土地」です。上記の2要件全てに該当する土地については帰属の承認ができません。また有体物とは具体的には以下の通りです。
- 果樹園の樹木
- 放置すると倒れる恐れがあるかれた樹木や枝
- 放置すると周辺の土地に浸入するおそれがあり定期的に伐採を行う必要がある竹
- 過去、治山事業等で施工した工作物のうち、補修が必要なもの
- 建物に該当しない廃屋
- 放置車両など
産業廃棄物等が地下に存する土地
8つ目の項目は、「産業廃棄物等が地下に存する土地」です。除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地は帰属の承認を得られません。具体的に想定される有体物は以下の通りです。
- 産業廃棄物
- 屋根瓦などの建築資材(いわゆるガラ)
- 地下にある既存建物の基礎部分やコンクリート片
- 古い水道管、浄化槽、井戸
- 大きな石など
隣地の所有者と争訟によらなければ管理処分できない土地
9つ目の項目は、「隣地の所有者と争訟によらなければ管理処分できない土地」です。主に上記3つの「民法上の通行権利が妨げられている土地」や不法占拠など「所有権に基づく使用収益が現に妨害されている土地」などが該当します。
災害措置の必要性があり、防止するために措置が必要な土地
10個目の項目は、「災害措置の必要性があり、防止するために措置が必要な土地」です。想定される具体例は以下の通りです。
- 土砂の崩壊の危険のある土地について崩壊を防ぐために保護工事を行う必要がある場合
- 大きな陥没がある土地について人の落下を防ぐためにこれを埋め立てる必要がある場合
- 大量の水が漏出している土地について配水ポンプを設置して水を排出する必要がある場合
申請手続きの流れ
最後にまとめです。相続土地国庫帰属制度は、不要な土地を手放せるメリットがある反面、手続きが煩雑で、お金もかかり、全ての土地が要件に当てはまるわけではありません。まずは、専門家に確認して見ましょう。
土地利用ニーズの低下等により、土地を相続した者の、土地を手放したいと考える方が増加しています。また、相続を契機として、土地を望まず取得した所有者の負担感が増しており、管理の不全化を招いています。
所有者不明土地の発生を抑えるため、相続や遺贈により土地の所有権を取得した方が、土地を手放して国庫に帰属されることを可能とする制度が相続土地国庫帰属制度です。