【合格者が話す】土地の自然的特性を深堀して考える

鑑定評価基準第1章第2節 不動産とその価格の特徴

不動産が国民の生活と活動に組み込まれどのように貢献しているかは具体的な価格として現れるものであるが、土地は他の一般の諸財と異なって次のような特性を持っ ている。

(1)自然的特性として、地理的位置の固定性、不動性(非移動性)、永続性(不変性)、 不増性、個別性(非同質性、非代替性)等を有し、固定的であって硬直的である。 (2)人文的特性として、用途の多様性(用途の競合、転換及び併存の可能性)、併合及び分割の可能性、社会的及び経済的位置の可変性等を有し、可変的であって伸縮的である。

自然的特性を深掘りして考える

なぜ、自然的特性と人文的特性というのか?

自然的特性は、土地がいつでも、どこでも、何に対してでも示すであろう一般的な性質であることに対して、人文的特性は、土地が「人間にかかわりをもつ時に」人間に対して示すであろう一般的な性質であるためです。

地理的位置の固定性

地理的位置の固定性は、絶対的なものです。地球上の決められた場所、例えば東経何度、北緯何度といつ地点は一つしかありません。地球が変わらない限り変わらないものです。

土地そのものの固定性というよりも、地表上のある地点が動かないので、座標との間に固定的関係にあるという方が正確かもしれません。

地理的位置の固定性は絶対的なものであり、これが他の自然的特性と人文的特性のおおもとになっているということです。

不動性(非移動性)

不動性(非移動性)とは、地理的位置の固定性の効果としてあらわれる特性です。不動性(非移動性)は変わらない地理的座標上の一点から他の点に動くことのない、また移せるものではないということです。

天災地変で災害が起きても、人間はその土地を動かしたり、土地を避難させることは出来ません。動いて避難できるのは、その土地の上に住む人間側です。また、土地が足りないからといって海外から輸入することも出来なければ、余ってるから輸出することも出来ません。

なお、稀に地滑りなどの自然的な移動が起こることもありえます。そういった意味では、地理的位置の固定性のように厳密には絶対的ではないですが、絶対的にに近いものといっていいでしょう。

永続性(不変性)

永続性(不変性)とは、使っても減らない、放っておいても腐らない、永久的な保存に耐えるということです。土地はその命数がほとんど永久的であります。

もちろん極めて長い年月の間には変わります。例えば、今の日本列島が今の姿になったのは、約8000年前のこととされ、それまでは大陸と繋がっていたと言われています。また気象や気候の変化に伴って、寒冷地が温暖地に変化することも、1000年単位では起こります。

そのため、永続性(不変性)は、厳密には絶対的とはいえないということです。

不増性

前述の不変性が質に関するものとすると、不増性は量に関するものと言えるでしょう。土地は、本来的に自然からさずかるもので、自然的状態においては面積は増減しません。

ただし、山や山林を住宅用地に造成するなど、存在する土地の面積の範囲内で増減があります。そういった意味において、不増性も絶対的なものではないともいえます。

個別性(非同質性、非代替性)

個別性(非同質性、非代替性)は、土地の基本的性質である地理的位置の固定性ということから当然に派生してくる特性です。東経何度、北緯何度に位置する土地は一つであります。

ただし、注意点として地理的位置に関する限り、土地は絶対的に個別性を有していますが、他の観点からすると必ずしもそうではありません。銀座は一つしか、ありませんが、繁華が高い商業地は他にもあります、都心に通勤30分の住宅用地も一つではありません。このように、地理的位置を異なるといっても、他の全ての項目で、土地が個別的であり、非同質的であり非代替的であるということではありません。

土地の自然的特性として、位置が変わらない、質が変わらない、量が変わらない、代わりのものがないと言えます。そして、これらの特性の源泉は絶対的な地理的位置の固定性にあるということです。