【合格者が話す】人文的特性を深堀して考える

鑑定評価基準第1章第2節 不動産とその価格の特徴

不動産が国民の生活と活動に組み込まれどのように貢献しているかは具体的な価格 として現れるものであるが、土地は他の一般の諸財と異なって次のような特性を持っ ている。

(1)自然的特性として、地理的位置の固定性、不動性(非移動性)、永続性(不変性)、 不増性、個別性(非同質性、非代替性)等を有し、固定的であって硬直的である。 (2)人文的特性として、用途の多様性(用途の競合、転換及び併存の可能性)、併合及び分割の可能性、社会的及び経済的位置の可変性等を有し、可変的であって伸縮的である。

人文的特性を深掘りして考える

用途の多様性

用途の多様性は、例えば住宅用地として、工業用地として、商業用地として、色々な用途にあてる可能性を本来持っています。

ある土地が、どのような用途に充てえるかは、地形・地勢・地質などの自然的特性によって、もしくは周囲や近隣の状況によって、土地利用に関する行政的な規制の有無によって、有効需要がどのような状態にあるかなどの人文的特性によってそれぞれ異なるでしょう。

用途の多様性:3つの異なった形にあらわれる
  1. 競合
  2. 転換
  3. 併存

用途の多様性は一つの土地について、3つの異なった形に具体的にあらわれます。それは、①競合、②転換、③併存です。

①競合についてです。色々な用途にあてるということは、1つの土地に対して、それぞれ異なった用途にあてようという要求が重なり合い、競合するという現象がおきます。どの用途が選択されるかは色んな要因がありますが、主に価格によって選択されるでしょう。

②転換についてです。一つの用途から他の用途に転換させることができます。農地を住宅地に、山林を住宅地にという形です。

③併存についてです。一つの土地が二つ以上の用途に充てられるという用途の併合があります。具体的には、下駄履きマンションなどです。1階が店舗で上層階が住宅など、二つの用途が重なり合って併合しています。

用途の多様性があることによって、現在どのような用途にあてられているのか、また将来どのような用途にあてられるのか、あるいはどのような用途に充てるのが一番いいかといった問題がおきます。土地は使い方を変えることができますし、7階建てのビルを8階建てに増築して効用を伸ばすことができます。つまり、可変的であって伸縮的であるのです。

社会的及び経済的位置

社会的位置とは、土地柄ですね。例えば、住みやすかった住宅地に工場ができた、スラム街になった、公園が廃止された、学校が移転したなど、住みにくい不便な環境になることは少なくありません。もちろんその逆もあります。つまり、不動産そのものは変わらなくても、それを取り巻くものが変わる結果、社会的に見て相対的な位置が変わってくるということです。

経済的位置とは、農地として生産を上げていないため、工場用地として使うことになり、数倍から数十倍の生産性を持つことになることも少なくありません。

したがって、土地は、自然的には、動かない、固定的であっても、人文的には変わらないというより、変わりやすいものといつことです。