山林売買の注意点と知っておくべきこと

山林売買の注意点

山林を持っていると管理が面倒ですよね。自分が現地に行くこともないでしょうし、木を切って手入れをすることもないでしょう。山林は所有していても大変ですし、売却することも簡単ではありません。本日は、山林の売買の注意点と知っておくべきことについて話をしていきたいと思います。

山林売却時の4つの注意点

登記簿面積と実測面積の差異

不動産売買では、登記簿面積での売買と実測面積での売買の2パターンがあります。山林売買の場合は、おそらく登記簿面積での売買となるでしょう。しかし、山林の場合、登記簿面積と実測面積に大きな差異があることは少なくありません。

では、どうすればいいでしょうか。2つの方法を覚えておきましょう。

  • 森林簿を参考にする
  • Google Earth等で面積を測定する

森林簿とは、森林所有者や森林の面積等の情報を記載した台帳です。自治体もしくは森林組合で見ることができます。Google Earth等で面積を測定するとは、インタネットで土地面積をおおむね計算できる便利なツールがありますので、こういったものを使ってみましょう。

売れない!!

はっきり言って、山林はなかなか売れません。都心部の人気のマンションだと数週間~1ヶ月あれば売れます。しかし、山林は5年~10年かけても売れないということはよくあることです。

不動産の価格は、不動産の需要と供給とバランスで決定されるものですが、山林の場合は売却したい方が圧倒的に多く、購入したい方はほんの一握りしかいないことが原因でしょう。そんな一部の購入者の属性イメージは下記のとおりです。

購入者属性イメージ
  • 林業関係者
  • リゾート開発業者
  • 太陽光発電の開発業者
  • キャンプ運営者
  • 海外富裕層

「最近は、ソロキャンプする人が増えたこともあって、山林を購入したい人も増えている」と聞くこともあります。実際多少増えているでしょう。ただ、その増加と比べて比較にならないくらい山林の売却ニーズは存在ます。そんなに甘いものではありません。

また、山林を売却する時には、原野商法にも注意しましょう。

仲介手数料は3%+6万円+消費税ではない!?

通常不動産の仲介手数料は、「売買価格の3%+6万円+消費税」と宅地建物取引業法で上限が決まられています。しかし、山林の場合は法律で定めがありません。そのため、不動産会社に依頼した場合、仲介手数料はいくらでもいいことになります。

ただ、不動産会社の立場から考えてみると納得感はあります。例えば、500万円の山林を売却してほしいと依頼された場合、仮に手数料が3%+6万円+消費税10%だと考えた場合、次の通りです。

  • 売買価格:500万×3%+6万円+消費税=23万1000円

不動産会社からすると田舎の山林を売却するのは、本当に大変なことです。商売を考えれば都心部の動きがいい不動産を売買していた方が圧倒的に儲かります。そのため、どうしても山林を売却したい場合は、しっかりとした報酬を支払う方がいいでしょう。

「山林所得税」と「譲渡所得税」の計算方法

山林を売買したときに、かかる税金は2種類です。①立木部分にかかる税金は、山林所得として課税されます。土地部分にかかる税金は、譲渡所得税として課税されます。具体的に見てみましょう。

山林所得税の計算方法
  • 山林所得の税額:山林所得金額×5分の1×所得税率×5

具体例:山林所得金額350万円、課税所得の税率20%の場合。(350万円×1/5×20%)×5=70万円が山林所得の税額となります。

続いて、山林所得金額の計算方法についてです。

  • 山林所得:売買金額ー必要経費ー特別控除

「売買代金」は、総収入金額とされています。「必要経費」は、植林費、維持管理費、伐採費、売却するために必要な費用(仲介手数料・測量費など)とされています。なお、必要経費には、概算経費控除と言われる特例があります。所有期間が15年以上の場合は、売買金額から譲渡費用を差し引いた金額の50%の金額に譲渡費用を加えた金額を必要経費とすることができるとされています。

譲渡所得税の計算方法
  • 譲渡所得税:譲渡所得×税率

※山林の所有期間が5年超(長期譲渡所得)の場合、税率は約15%。5年以下(短期譲渡所得)の場合、税率はやう30%となります。

※譲渡所得=売却価格ー(取得費+譲渡費用)

税金部分については、なるべく分かりやすいように細かい部分は説明を省略したり、大まかな言い回しにしています。そのため、税金について詳細を把握されたい場合は、税理士もしくは最寄りの税務署に確認ください。

山林購入時の5つの注意点

山林売買で、不動産会社は宅建業法の縛りは原則受けない

山林売買では、不動産会社は宅建業法の縛りを受けません。山林を山林として売買する時は、重要事項説明がなく、売買契約書のみで取引されることになります。そのため、山林を購入する際には、山林購入後に自分はどのような用途で使おうとしているのか、それは実現可能なのかを不動産会社に確認をとるだけでなく、自分でも行政等に確認をすべきでしょう。

山林売買全てが宅建業法に該当しないわけではありません。山林が都市計画法で定める用途地域内にある土地の場合は宅地として扱いがされ、宅建業法の適用を受けることになります。

ここからは、私の主観ですが、宅建業者側としても用途地域の定めがないような都市計画区域外の山林を重要事項調査するというのはなかなか骨が折れる作業となります。例えば、敷地と道路との関係(そもそも道路に接道していない)、ライフライン(電気・ガス・水道・下水道がない)、隣接地との境界や越境がわからないなど大半が不明という重要事項説明になってしまいそうですね。

自然公園法に該当していないか!?

自然公園法とは、日本のすぐれた自然の風景地を保護することを目的としている法律です。「特別地域」「特別保護地区」「海域公園地区」「普通地域」等により異なりますが、工作物の新築・改築・増築等をする場合は許可、届出が必要となります。そのため、木を切ることも許可がいるし、建物が許可がないと建てられないこともあります。

自然公園法に該当しているかどうかは、行政の環境課等で確認しましょう。また、森林法、風致地区に該当していないか等についても行政に確認しておきましょう。

保安林ではないか!?

保安林とは、水源かん養機能の維持と土砂災害防止の目的とているものです。森林法を根拠に農林水産大臣又は都道府県知事によって指定されます。具体的な規制は①立木の伐採制限、②土地形質の変更制限、③伐採後の植栽義務の規制があります。

保安林に該当しているかどうかは、林業事務所等で確認しましょう。

なお、保安林は、不動産登記上の地目が保安林となっていることもあれば、登記の地目は山林のままで保安林に指定されていることもあります。その点は、注意しましょう。

山林の立地:急斜面地と土砂災害に注意

住宅地が近い山林はなるべく購入を見送った方がいいでしょう。注意が必要なこととして急斜面地は土砂災害の可能性があります。そして、住宅地に近いとその土砂災害が住宅街にまで広がると2次災害でとんでもない被害を受ける可能性があります。

2021年7月に静岡県熱海市で記録的な大雨の影響によって、大きな土砂災害がありました。土砂災害箇所付近には太陽光発電施設が設置されていて、それが原因ではないかという話が出ています。結論、それが直接的な影響だったかわかりませんが、住宅街に近いと色んな2次被害の可能性に繋がるというのがよくわかると思います。

立木登記を確認しよう

山林では、土地所有者と山林の所有者が違うことがあります。立木登記を確認しましょう。価値のある立木で、所有権を第三者に主張するために立木登記をすることがあります。建物登記と同じようなイメージですが、土地の所有者が誰かということは関係がなく登記が可能です。

私は、立木登記というものに出会ったことがないので、詳細はわかりません。ただ、相当稀なケースだと思いますので、不動産会社に確認するだけではなく、自分で法務局に行き、登記簿を確認する際に、窓口で立木登記がないかの確認をするといいでしょう。

山林価格の決定方法

  • 山林価格:土地価格+立木価格

山林の価格は、土地価格+立木価格で算出します。土地価格は、何となくイメージがつくかと思いますが、立木価格は少し知識が必要です。

まず、人工林と言われるスギ、ヒノキは価値が高いです。そのため、山林の木がスギやヒノキの場合は、土地価格より立木価格の方が高いことも少なくないでしょう。人工林の木は、家具などに使用されているため、利用価値があるということです。

それに比較して天然林は使う用途がありませんので、立木価格はないに等しいでしょう。

山林価格の評価方法として、鑑定評価では単純な土地価格+立木価格だけでなく、人工林を前提とした場合、林業収益からなる収益価格も理論上算出することになります。ただし、日本の林業経営は厳しい状況であり、林業収益価格が高く算出されることは少ないでしょう。