もくじ
廃墟マンション問題
増加する廃墟マンション(2041年に築40年以上が425.4万戸)
国交省によると、築40年以上のマンションは2021年で115.6万戸(マンションストック総数の約17%)です。10年後の2031年には約2.2倍の249.1万戸、20年後の2041年には約3.7倍の425.4万戸になる予定です。
マンションの管理を巡っては、2020年6月にマンション管理適正化法の改正が成立しました。以前は、マンションは私有財産であることから管理組合の自主的な管理に委ねられたていました。改正後は、管理の適正化のため、組合の求めがなくても、行政が積極的に関与できるようになっています。
国土交通省公式HPより
解体には、区分所有者のどれくらいの賛同が必要!?
区分所有建物のマンションの解体は、5分の4の要件があります。
- 集会において、区分所有者および議決権の5分の4以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地もしくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部もしくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議をすることができる。
具体的には、区分所有者および議決権の5分の4以上となります。従って、区分所有者の人数と区分所有者が有する専有面積の割合の2つともで5分の4以上が必要となります。
滋賀県野洲市の美和コーポ!!
美和コーポの概要
- 物件名:美和コーポ
- 住所:滋賀県野洲市野洲
- 竣工1972年
- 構造:鉄骨造3階建て
- 総戸数:9戸
美和コーポの問題点と解体までの流れ
美和コーポは、1972年築の鉄骨3階建て全9戸の区分所有マンションです。区分所有者による管理組合は存在せず、2020年7月に解体される10年以上前からマンションの住民もいなくなって空きの状態でした。建物の維持管理がされず、地震で壁が崩落し倒壊の危険性が指摘されていましたが、分譲マンションゆえに解体工事を進めることができませんでした。
野洲市は所有者に対応を求めたが、所有者のうち解体工事に同意を得られた人もいましたが、解体同意が取れない人、連絡が付かない人がいました。野洲市は、2019年3月、空き家対策特別措置法に基づく行政代執行を決め、2020年7月解体を実施しました。
野洲市が負担した解体費用は約1億1800万円です。解体後、各区分所有者に1人あたり約1300万円を請求しています。なお、9名の所有者のうち、所在が判明している8名に対して、行政代執行に要した費用の9分の1ずつを請求(端数分は市が負担)行方不明の1名に対しては請求を行っていません。
- 平成24年11月:手すりが外れて階段が崩壊しているとの通報がある。
- 平成25年12月:当時の空き家条例(現在は廃止)の規定に基づき、所有者に対し改善指導を行う。
- 平成26年1月:一部の所有者により手すりの撤去が実施される。
- 平成30年6月:大阪北部地震が発生。市道に面した壁面が崩壊する。
- 平成30年7月:所有者全員に、建物の状況の報告と対処の依頼を文書にて行う。アスベストの露出が判明。
- 平成30年8月:アスベスト調査の結果、アスベストが検出される。所有者に対し、今後の対応等にかんする説明会を開催(第1回)
- 平成30年9月:空家等対策の推進に関する特別措置法に基づく立入調査を実施。野洲市空家等対策協議会を開催し、特定空家に認定。所有者に対し、今後の対応等に関する説明会を開催(第2回)
- 空家特別措置法(指導・助言):平成30年9月28日通知、平成30年11月19日期限
- 空家特別措置法(勧告):平成30年12月12日通知、平成31年2月28日期限
- 空家特別措置法(意見提出等):平成31年3月1日通知、平成31年3月15日期限
- 空家特別措置法(命令):平成31年3月18日通知、令和元年5月7日期限
- 行政代執行法(戒告書):令和元年7月22日通知、令和元年9月21日期限
- 行政代執行法(代執行令書):令和元年12月9日通知、令和2年1月15日期限
詳細は、下記国土交通省HP「区分所有建物の空き家に対する行政代執行の事例について」で確認できます。