もくじ
エスコンジャパンリートの概要
投資法人の仕組み
2022年7月、エスコンジャパンリート投資法人の運用会社にあたるエスコンアセットマネジメントが金融庁より業務停止命令を受けました。本日は、その話をしていきますが、まずはエスコンジャパンリートの概要についてです。
投資法人は、エスコンジャパンリート投資法人で、運用会社がエスコンアセットマネジメントになります。そして、スポンサーが親会社にあたる日本エスコンと中部電力になります。
ポートフォリオ
エスコンジャパンリート投資法人は、2019年2月に上場したリートです。2022年7月現在38物件を保有し、取得価格合計696億円、稼働率99.9%となっています。
ポートフォリオの特徴として、底地物件を多く保有しているということです。また、取得ルートは、スポンサー・サポート会社ルートが4分の3を占めます。したがって、日本エスコンと中部電力から多くの物件を購入していることになります。
地域別にみると日本エスコンのお膝元の近畿圏が半数をしめています。
エスコンジャパンリート業務停止命令の内容
不動産鑑定業者の独立性を損なう不適切な働きかけ
一つ目は、鑑定業者の独立性を損なう不適切な働きかけです。鑑定業者が概算額を通知した後、運用会社のエスコンアセットマネジメントに対して、親会社にあたる日本エスコンは鑑定概算額より高い売却希望価格を伝え、エスコンアセットマネジメントは鑑定業者に不適切な働きかけをして、結果鑑定業者は当社の概算額より高い日本エスコンの売却希望価格を上回る鑑定評価額を提示します。
不適切な働きかけとは、「いくらで売るからそれより高い鑑定評価額は出せない?」ということでしょう。
不適切な不動産鑑定業者の選定プロセス
二つ目は、不適切な不動産鑑定業者の選定プロセスです。エスコンアセットマネジメントは、親会社の売却希望価格以上の鑑定評価額の取得も企図します。そして、複数の鑑定会社に鑑定評価の概算と報酬額の聞き取りをします。鑑定評価額を最も高く提示する業者に対して、報酬額が最小になるように交渉します。社内稟議書類では、鑑定評価概算額については触れず、報酬額が低いことを理由に選定したこととなっています。
選定プロセスとして、本来は鑑定評価額が高い業者を選定したいところ、報酬額が安いことを理由という偽りの内容で進めたことが問題でしょう。
鑑定業者からみる依頼者プレッシャー
依頼者プレッシャー通報制度とは?
依頼者プレッシャーとは、依頼者が一定の鑑定評価額の強要、誘導や妥当性を欠く評価条件の設定の強要をいいます。
この場合、鑑定業者または鑑定士は、鑑定士協会への通報を義務化し、鑑定評価監査委員での審議のうえ、依頼者や監督官庁へその旨を通知・通報する制度です。
どこまでを依頼者プレッシャーとするのか?
鑑定評価実施には、鑑定業者は依頼者と依頼書兼承諾書を締結します。
ここでは依頼書兼承諾書を締結する前や鑑定評価に着手しない段階で希望価格の伝達や価格目線のすり合わせといったやり取りではなく、依頼後に鑑定評価の依頼の取り消し、報酬の増減、今後の取引停止をほのめかすなどにより、依頼者が意図する価格に近づかせる行為をいい、一定の強要性が必要となるものです。