【JREIT売買】コンフォートホテル長野の鑑定評価

コンフォートホテル長野の概要

コンフォートホテル長野は、長野駅徒歩3分に位置するホテルです。

本物件は、2018年3月から投資法人みらいが保有していました。運用会社は三井物産とイデラパートナーズになります。投資法人みらいが公開するデータによると2018年3月にスポンサーから本物件を5億8000万円にて取得、取得時の鑑定NOIは5.8%となっています。

2022年5月売主投資法人みらい、買主いちごホテルリートにて売買されました。売主も買主もREITのため、売買のお知らせが公開されています。

コンフォートホテル長野の売買時の鑑定評価額について

REITは、法律に基づき売買時には鑑定評価が義務付けられています。そして、鑑定評価額等の概略は公開されますので、少し見ていきたいと思います。

売主の鑑定評価額

売主:投資法人みらいの公表内容と鑑定評価額について
  • 譲渡予定価格:6億7000万円
  • 帳簿価額:6億3500万円
  • 取得価格:5億8000万円
  • 鑑定評価額:5億8800万円
  • 鑑定業者:大和不動産鑑定株式会社(2021年売上:業界2位)

譲渡の理由:①ディフェンシブ性の向上(本譲渡によりポートフォリオのホテル比率は15.8%まで低下)②収益性の改善(償却後利回りがポートフォリオ平均を下回る物件を譲渡)③NAVの上昇(帳簿価額及び鑑定評価額を上回る価格での譲渡により含み損が解消)

売主の鑑定評価額は、5億8800万円となっています。

買主の鑑定評価額

買主:いちごホテルリートの公表内容と鑑定評価額について
  • 取得予定価格:6億7000万円
  • 鑑定評価額:7億円
  • 鑑定業者:株式会社谷沢不動産鑑定所(2021年売上:業界3位)

取得の理由:①運用戦略のもと、ビジネス・レジャーの両面の安定した需要が期待できる②ホテルのオペレーターとの契約は固定賃料のみとなっており、今後は契約条件の見直しを通じてアップサイドを享受することも期待できるため。

買主の鑑定評価額は、7億円となっています。

同じ不動産で「5億8800万円」と「7億円」の評価!?

コンフォートホテル長野という1つの不動産に対して、売主が発注した鑑定業者は、鑑定評価額5億8800万円、買主が発注した鑑定業者は、鑑定評価額7億円という結果になっています。

売主の立場になって考えてみます。「本物件を取得した5億8000万より現在の価値は高く(鑑定評価額5億8800万)当時購入した投資判断は間違っておりませんでした。そして、今回買主に譲渡する価格は6億7000万であり、今回譲渡することによって利益が見込めます。投資家の皆様よろしいですよね!?

買主の立場になって考えてみます。「取得する価格は6億7000万ですが、現在の適正な評価としては7億円(鑑定評価額7億)が出ており、適正な価格の範囲で購入となります。投資家の皆様よろしいですよね?

鑑定評価額が違う2つの理由

1つ目は、鑑定評価の運営収益の部分についてです。詳細が非開示になっていますので、あくまで私の私見ですが、売主は現在オペレーターと固定賃料の契約となっているので固定賃料がある程度今後も続くだろうとして評価しているのに対して、買主は「今後は契約条件の見直しを通じてアップサイドを成就することも期待できる」としています。このあたりに違いがあるかもしれません。

2つ目は、鑑定する側からの話です。不動産鑑定は、REITが物件を取得又は保有期間中の評価をする場合、特定価格として求めます。これに対して、REITが物件を譲渡する場合、正常価格として求めます。ホテルとして稼働していて今後もホテルとして利用されるので、評価額に変化があるかわかりませんが、鑑定評価で求める価格が形式的には異なるということになります。