命の次に大切な権利証・登記識別情報を無くしたらどうする?

権利証と登記識別情報の違い

まず、事前の知識として権利証と登記識別情報は何が違うのでしょうか?

平成17年に新「不動産登記法」が施行され、オンライン登記申請の導入が開始され、オンライン庁になると登記済証(権利証)制度は廃止されました。そして、登記済証(権利証)の廃止により「登記識別情報」制度が設けられました。登記が完了すると、登記名義人となった者に対し、その者を識別するための情報である「登記識別情報」が通知されます。なお、登記識別情報は、英数字12桁の組み合わせの暗証番号で表示されます。

登記済証(権利証)に代わる「登記識別情報」

  1. 登記識別情報は新たに登記名義人になった買主や抵当権者に通知されます。
  2. 登記識別情報は英数字12桁の組み合わせの暗証番号で表示されます。
  3. 登記識別情報は、不動産ごとに新たな名義人となった人それぞれに通知されます。
  4. 登記識別情報は、売主として所有権移転登記申請をする場合や担保提供者として抵当権設定する場合などに使われます。

権利証・登記識別情報を無くしたら?

不動産売買を行う場合、売主は権利証・登記識別情報が必要となります。しかし、紛失して書類がない場合があります。不動産売買の現場にいると10回に1回くらいはそのようなことがあります。一番困るのは、あるのに決済当日に忘れてしまうケースです。。。

さて、権利証・登記識別情報がなくても大丈夫なのでしょうか?

結論からお話しますと問題ありません。しかし、権利証・登記識別情報に変わる手続きを行うことと費用がかかります。

権利証・登記識別情報がない場合に登記を行う3つの方法

①事前通知

権利証・登記識別情報がない場合、登記申請時に権利証をつけられなかったことを記載し、登記申請書を提出します。すると登記所から問い合わせの郵便物が届きます。「事前通知制度」と呼ばれるものです。この事前通知に添付されている「回答書」に署名押印して2週間以内に法務局へ提出します。この事前通知制度は、あくまで2週間以内に提出があった場合、登記が進められます。そのため、使うことは少ないでしょう。私は、出会ったことがありません。

②本人確認

登記申請を代理する司法書士先生が売主と面談をして「所有者本人で間違いないかの確認」をしたという書類を司法書士先生が作成し、これが権利証・登記識別情報の代わりになるというものです。

権利証・登記識別情報がない場合に最も多く使われる手段です。基本ここさえ押さえておけば大丈夫かと思います。また、司法書士による本人確認については、数万円~十万円程度の費用がかかります。

③公証人による本人確認

②の司法書士先生などの資格者代理人ではなくて、公証役場に出向き、公証人に本人確認をしてもらうということです。費用は、司法書士先生の本人確認より安くできますが、公証役場へ行く手間や手続きがよくわからないなどにより、あまり使われていないと思います。私は、一度も見たことがありません。

権利証・登記識別情報は、無くしても代えがききますが、手間も費用もかかりますし、悪用されるという可能性も残してしまいます。大切に保管しましょう。

不動産登記法第21条 (登記識別情報の通知)

登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、当該登記を完了したときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該申請人に対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。ただし、当該申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合その他の法務省令で定める場合は、この限りでない。