東京都の地銀・信金・信組の不良債権比率は!?<2019年度>

不良債権の概要

不良債権とは?

不良債権とは、金融機関において、融資先の経営悪化や倒産などの理由から、回収困難になる可能性が高い債権をいいます。

金融円滑化法とは?

平成21年12月に金融円滑化法が施行されました。金融円滑化法は、債務の弁済に支障を生じている中小企業者に対して金融機関が条件変更等に応じるべく努力義務が課された法律です。

金融円滑化法の歴史を時系列にすると下記の通りです。

金融円滑化法の歴史
  • 平成11年(1999年)4月 サービサー設立
  • 平成12年(2000年)4月 民事再生法施行
  • 平成18年(2006年)9月 首相が変わり、再チャレンジがキーワードに。
  • 平成20年(2008年)9月 リーマンショック
  • 平成21年(2009年)12月 金融円滑化法施行

このような歴史によって、債権は回収から延命、回収から再生へと変化していくことになります。

債務者区分とは?

金融機関は、債務者の財務内容等に基づき、債務者の信用リスクの程度に応じて信用格付を行うとしています。これに基づいて金融機関は、自己査定を行っています。そして、債務者を正常先、要注意先、要管理先、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先という債務者区分に分けています。

正常先とは、業況が良好で、かつ、債務内容にも特段の問題がないと認められる債務者をいいます。

要注意先は、金利減免などを行っているなど貸し出し条件に問題がある債務者、元本返済もしくは利息支払いが事実上滞納しているなど履行状況に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者をいいます。

要管理先は、要注意先の中で特に注意を要する先、具体的には3か月以上滞納している先や条件変更で条件を緩和した先などを要管理先とします。

破綻懸念先は、現状経営破綻の状況にはありませんが、経営難の状態にあり、今後経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者をいいます。

実質破綻先は、法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあって、再建の見通しがな状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者をいいます。

破綻先は、法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者をいいます。例えば、破産、清算、会社更生、民事再生などの事由により経営破綻に陥っている状況です。

東京都の地銀・信金・信組の不良債権比率は?

地銀の不良債権比率

東京都の地銀不良債権比率の一覧です。東京スター銀行は、不良債権比率1%未満、東日本銀行が1.5%未満、東京都民銀行、八千代銀行が2%を超えています。なお、都民銀行、八千代銀行、新銀行東京は、2018年5月に合併し、きらぼし銀行となっています。本データは、合併前のものになります。

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地銀 不良債権比率(金融庁 都道府県別の中小・地域金融機関情報一覧より)
信用金庫の不良債権比率

東京都の信用金庫不良債権比率の一覧です。西武信用金庫、目黒信用金庫が不良債権比率1%未満ですが、興産信用金庫、東京シティ信用金庫、城南信用金庫、西京信用金庫、昭和信用金庫、滝野川信用金庫、多摩信用金庫は、不良債権比率が5%を超えています。

信用金庫は、地銀と比較するとより小規模な中小企業への融資を中心に行っているため、不良債権比率が高い印象です。

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信金 不良債権比率(金融庁 都道府県別の中小・地域金融機関情報一覧より)
信用組合の不良債権比率

東京都の信用組合の不良債権比率の一覧です。職域信用組合といわれる、東京証券信用組合、警視庁職員信用組合、東京消防職員信用組合、朝日新聞信用組合は、不良債権比率1%未満ですが、全東栄信用組合、東京厚生信用組合、江東信用組合、青和信用組合、中ノ郷信用組合、七島信用組合、ハナ信用組合は、不良債権比率が5%を超えています。

職域信用組合以外の地域、業域の信用組合は、地銀・信用金庫と比較しても不良債権比率が高い印象です。

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信組不良債権比率(金融庁 都道府県別の中小・地域金融機関情報一覧より)

不良債権のローン・セカンダリーマーケット

不良債権の選択肢

金融機関は、不良債権化した債権をどのように回収するのでしょうか。おおまかに大別すると、回収の観点で考えると「競売」「任意売却」「債権譲渡」と言った選択肢になります。

競売は、担保権の実行をして、裁判所が主導して公明正大に進んでいきます。任意売却は、債務者と同意のもと、一般公開市場で不動産を売却していくことになります。債権譲渡は、金融機関がサービサーに債権を売却することいいます。競売は、公明正大に進められるものの公に売却することになります。そのため、金融機関が長く取引関係にある債務者の場合などは、競売という手段を取らずに債権譲渡をするケースもあります。なお、金融機関がサービサーに債権譲渡するマーケットをセカンダリーマーケットと呼びます。

サービサーの現状

全国サービサー協会の会員となるサービサーは、一時期100社を超えていたものの、現状少なくなってきています。1つは、金融機関が回収から延命・再生に舵をきったことによって、債権譲渡が減ってきている。2つめは、サービサーが増えすぎたことによって、債権の買取り価格が上昇し、昔ほどサービサーが儲かることが少なくなってきたことによります。