アスベスト問題と訴訟について

アスベストとは!?

アスベスト(石綿)は、天然に算出する繊維状の鉱物で、耐熱、耐火、防音などの性能に優れています。しかし、健康被害を引き起こすため、日本では原則として製造や使用が禁止されています。

アスベストの問題と背景

  • アスベストの特性と用途:耐熱性・耐久性に優れ、建築・工業製品に多用された。
  • 健康被害の発覚:長期間の吸入により、中皮腫肺がんアスベスト肺などの病気を引き起こすことが判明。
  • 規制の強化:1980年代以降、各国で規制が強化され、使用が禁止・制限されるようになった。

日本の主要なアスベスト訴訟事例

尼崎アスベスト訴訟(2006年)

  • クボタの工場周辺住民が健康被害を訴え、企業の責任が問われた。
  • 和解金の支払いと企業の責任認定。
建設作業員訴訟(2021年最高裁判決)
  • 建設現場でアスベストを吸引した作業員が国と企業を提訴。
  • 最高裁が国とメーカーの責任を認め、約13億円の賠償命令。
  • 国の責任が明確化し、補償の枠組みが拡大。
大阪泉南アスベスト国家賠償請求訴訟(2014年最高裁判決)

  • 大阪府南部・泉南地域の石綿工場の元労働者やその遺族が、国に対して損害賠償を求めた訴訟
  • 平成26年10月9日に最高裁判決で国の責任が認められ、和解制度の基礎となった
  • 国は、一定の要件を満たす場合に、訴訟の中で和解手続きを進め、損害賠償金を支払うと表明した
ニチアス(岐阜県・羽島工場・石綿ばく露)事件(2015年)

  • アスベスト工場でアスベスト製品の製造作業などに従事していた2名の労働者が、勤務先の会社に対して損害賠償を求めた事案
  • 岐阜地裁は、被告会社が石綿粉じんの発生・飛散防止の対策が不十分であったとして安全配慮義務違反を認定した

アスベスト訴訟の争点

争点内容
企業責任過去の製造・販売企業の責任(賠償義務の有無)
国の責任適切な規制を行わなかった国の責任
訴訟の時効罹患後何年以内に訴訟を起こせるか
補償範囲被害者本人だけでなく、家族の補償の可否

アスベストの今後の影響

  • 企業の賠償責任の拡大:企業の過去の行為が問われ、和解や賠償額の増加が予想される。
  • 国の補償制度の拡充:「石綿健康被害救済制度」の対象拡大が進む可能性。
  • 解体工事・リフォーム業界への影響:古い建物の解体時にアスベスト除去が義務化され、施工コストが上昇。