【無電柱化】なぜ、日本では電柱のない街並みは進まないのか!?

無電柱化のメリット・デメリット

日本人は電柱に違和感を感じないでしょう。電柱があり、電線が張りめぐらされている街並みは当たり前の風景であり、それが普通です。しかし、海外から日本にきた外国の方は、この風景に奇妙な印象を受けるようです。日本には約3600万本の電柱があります。皆さんはこの電柱についてどのような印象を受けますか!?

無電柱化とは!?

無電柱化とは、道路に林木する電柱を、通行する人の視野に入らなくすることです。

国土交通省 四国地方整備局より

広義の無電柱化は、大きく2つにわけることができます。1つ目は、電線類を地中に埋めることで「地中化による無電柱化と言います。2つ目は、電線類地中化以外で電柱と電線を、道路を通行する人の視野から消すことがあります。これを「地中化以外による無電柱化と言います。

地中化による無電柱化

国土交通省 四国地方整備局より

地中化以外による無電柱化

無電柱化のメリット

無電柱化のメリット
  1. 大規模災害が起きた時に、電柱等が倒壊することによる道路の寸断を防止
  2. 無電柱化により歩道の有効幅員を広げることで、通行空間の安全性・快適性を確保
  3. 景観の阻害要因となる電柱・電線をなくし、良好な景観を形成

メリット①:電柱等が倒壊することによる道路の寸断を防止

「国土交通省 四国地方整備局 無電柱化はなぜ必要?」より

メリットの一つ目は、台風や地震などの災害時に、電柱が倒れたり、電線類が垂れ下がったりすることによって、道路の寸断や危険性を回避することができます。災害時に車が通れないということがどれだけ大きなことかは日本人は経験しているはずです。

メリット②:無電柱化により歩道の幅員を広げ、安全性・快適性を確保

「国土交通省 四国地方整備局 無電柱化はなぜ必要?」より

メリットの二つ目は、電柱や電線が無くなることにより、歩道の幅員を広げて、安全性・快適性を確保できます。車いすやベビーカーを利用する人に安全で安心できる歩行空間ができます。上記は愛媛県宇和島市の国道56号線の事例です。

メリット③:電柱・電線をなくし、良好な景観を形成

「国土交通省 四国地方整備局 無電柱化はなぜ必要?」より

地上に張りめぐらされた電線類がなくなり、美しい街並みが形成されます。上記は高知県高岡郡の国道440号線の事例です。

無電柱化のデメリット

無電柱化のデメリット
  1. 高コストであること
  2. 工事の期間が長い
  3. 災害時の復旧に時間がかかること
  4. 機器の設置場所の確保

デメリット①:高コストであること

デメリットの1つ目は、通常の電柱設置に比べて、無電柱化はコストが高いです。無電柱化は、約10倍のコストがかかると言われています。建築コストの下げることは課題です。

デメリット②:工期が長いこと

デメリットの2つ目は、工期が長いことがあげられます。無電柱化の工期は、設計から始めり、管路工事や入線工事をへて、舗装復旧までは5年~7年かかると言われています。

デメリット③:災害時の復旧に時間がかかること

デメリットの3つ目は、災害時に、通常の電柱と比べて無電柱化(電線の地中化)は破損個所の特定や復旧に時間がかかります。

デメリット④:機器の設置場所の確保

デメリットの4つ目は、無電柱化を行うにあたって、機器の設置場所の確保です。基本的に、無電柱化では変圧器(トランス)を地上設置することになります。狭い道路だと設置場所の確保ができないこともあります。

【無電柱化】海外と比較してわかる実態!!

国土交通省「無電柱化の取組について」より

ロンドン・パリなどのヨーロッパの主要都市や香港・シンガポールなどのアジアの主要都市では無電柱化が進んでいるのに対して、日本の無電柱化率は東京23区で8%、大阪市で6%が実態です。まだまだ数値として圧倒的に少ないことがわかります。

日本のデータは、国土交通省調べによる2018年度末のデータとなります。

無電柱化推進計画とガイドライン

無電柱化推進計画

日本では、昭和60年代から、電線類を地中へ埋設するなど無電柱化について計画的に取り組みをしてきています。しかし、欧米、アジアの主要都市と比較すると大幅に遅れている状況です。

無電柱化は、防災性の向上、安全性・快適性の確保、良好な景観形成の観点から実施してきましたが、近年、災害の激甚化・頻発化、あるいは高齢者の増加等により、その必要性が高まっています。

無電柱化を強力に進めるため議員立法により、平成 28 年 12 月に無電柱化の推進に関する法律が定められました。国では、平成 30 年に無電柱化法第 7 条の規定に基づく「無電柱化推進計画」を策定し、無電柱化の推進に向けた着実な取組を行っている状況です。