抵当権の優先弁済
前回の記事で抵当権の説明をしていきました。今回は、抵当権の優先弁済についてです。具体的に見ていきましょう。
抵当権者(担保権を持っている債権者)は、一般債権者(担保権を持たない債権者)と自己の抵当権に劣後する後順位抵当権者より優先的に弁済を受けることができます。優先弁済の最も重要な点は、担保権を持つ債権者が、債権者平等の原則を破って、一般債権者より優先的に弁済を受け取ることです。一般債権者は、担保権者が回収した残りを平等に按分しますが、抵当権者のみで配当がなかった場合は0となります。次に、自己の抵当権に劣後する抵当権者に対する優先権です。抵当権の優先は登記の順位で決まります。従って、抵当権の順位が重要になるということです。
2つ例を出して説明していきます。
①配当原資1億円。抵当権者Aが6000万、抵当権者B3000万、抵当権者C2000万、一般債権者D500万
■抵当権者A:残債6000万→6000万満額回収
■抵当権者B:残債3000万→3000万満額回収
■抵当権者C:残債2000万→1000万満額回収
■一般債権者D:残債500万→回収0円
②配当原資1億円。抵当権者A3000万、抵当権者B3000万、抵当権者C3000万、一般債権者D1000万、一般債権者E1000万
■抵当権者A:残債3000万→3000万満額回収
■抵当権者B:残債3000万→3000万満額回収
■抵当権者C:残債3000万→3000万満額回収
■一般債権者D:残債1000万→回収500万円
■一般債権者E:残債1000万→回収500万円
抵当権の実行 利息は最後の2年分だけ!?
抵当権については、利息についても当然に担保されるのが原則です。しかし、それを無制限に認めてしまうと、利息が多額に膨れ上がってしまい、後順位抵当権者の利益を害する恐れがあります。そこで、抵当権の実行などをした場合、利息などについては、最後の2年分しか担保されないとした規定です。
民法第375条(抵当権の被担保債権の範囲)
- 抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。
- 前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。